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【あらすじ】

この世に偶然はあり得ない。
結婚3年目、幸福でもないが不幸でもない普通の結婚生活が突如として終わりを告げた。
そう、夫の浮気が発覚したのだ……。
あらゆる意味で必然だった離婚の一幕。

【登場人物】

・清水聡(シミズ サトシ):29歳のサラリーマン。趣味は最近はじめたゴルフ。家事もたまに手伝ってくれる普通の男。千春の夫。結婚3年目。


・清水千春(シミズ チハル):28歳のOL。結婚を機に年収は下がるが定時で帰れる部署に移動した。趣味はウォーキング。聡の妻。結婚3年目。


・松本和男(マツモト カズオ):28歳の弁護士。千春の高校時代の同級生。仕事一筋の独身。千春から相談を受け離婚協議をとりもつ。

​【本文】

 

(場面:自宅)

聡:はぁ〜……、ハァーーーー。疲れた。千春~、ただいま~。
聡:おかしいな、寝ちゃったのかな?
聡:もう夜の11時だし、寝ていてもおかしくはないけど、いつもなら起きてるよな。
聡:甘い出迎えなんてないけど、「おかえり、お疲れ様」くらいは言ってくれるぞ
聡:おーい、千春~、帰ったぞ~
千春:聞こえてるわよ、お帰り
聡:なんだ、起きてるんじゃないか……って、その男誰だよ?
聡:面識…ないよな……、誰だ?
千春:面識あるわけないでしょ、それより着替えてきたら、ちょっと話があるの
聡:なんだよ改まって、というかそいつ誰だよ
和男:申し遅れました。私、弁護士の松本和男と申します。
聡:はっはーん、読めたぞ。遺産の件だな、千春の実家の
千春:違うわよ、バッカじゃないの
聡:ならなんだよ、離婚でもしようってか
千春:……
聡:え、まじ?
千春:…………
聡:不倫か?良いぜ、たっぷり慰謝料払えよな
千春:大西美紀(おおにしみき)って名前だったかしら
聡:……
千春:この一年、随分とお楽しみだったみたいね
千春:新入社員歓迎会で遅くなる?あなたの会社はよその会社の方を歓迎する文化でもあるのかしら
千春:今日もお楽しみみたいだったし、先日の出張も大阪ではなくて金沢だったみたいね、お二人での温泉宿、満喫できた?
聡:……(咳払い)
聡:何か、勘違いをしてる、君は
聡:そんな事実はない
千春:これ、ばっちり写真に写ってるんだけど
千春:楽しそうね。これは、今年の5月23日の金曜日の夜の写真。場所は銀座だったかしら
聡:誤解だよ、取引先の社長の娘さんで仕方なく

 

千春は1枚の紙を取り出す。
 

千春:大西美紀、23歳、職業は会社員。実家は新潟の農家で、兄弟(きょうだい)なし。現在は、都内で一人暮らし。
千春:あなた、IT企業のシステムエンジニアよね?農家と取引でもしてるの?農家も一応、社長?と言えなくもないのかしら
聡:そ、それは、なんというか……
和男:まずは座りませんか?
聡:というか、お前は何なんだよ
千春:松本くんは弁護士だって言ったでしょ
聡:随分、親しそうじゃないか
和男:仕事ですので、私情を話すのは気が引けるのですが、奥様とは高校時代の同級生でして
和男:去年の同窓会の時に私が弁護士だと伝えたものですから、今回ご相談を頂きました
和男:なかなか、見ず知らずの人に相談できる内容ではないものですから、はい
聡:……
千春:座って
和男:お座りください。もう言い逃れのできる状況ではないので、その、申し上げにくいのですが、着々と手続きを進めていくだけと言いますか
聡:ちっ、きたないやり方しやがって、金か、所詮は金なんだよな
千春:そんな、言い方しなくてもいいじゃない、あなたがいけないのよ
和男:興信所も立派な仕事ですので
聡:人の幸せを壊して食う飯はうまいか
千春:信じてたのに……
和男:勘違いしないでください、この家庭を壊したのは興信所でもましてや奥さんでもありません。あなた自身です
聡:で?
千春:松本くん、もう良いわ、何も聞きたくないし話したくない、少し疲れちゃった
和男:良いの?
千春:えぇ
和男:……
和男:清水聡さん、こちらが事前に奥様と話し合った内容です
和男:離婚、慰謝料500万円+興信所に支払った140万2千円、財産分与なし、ただしこちらのご自宅の契約は聡様ですので、ご自宅は対象から外れております
和男:私も何度もこう言った離婚の協議を行っておりますが、かなり譲歩しております
和男:受け入れて頂けない場合は、法廷で会うしかなくなりますので、ご了承ください
聡:……、いや、はぁ……
和男:どうされますか?
聡:1日考えさせてくれ
和男:奥様どうされますか?
千春:その呼び方やめて、明日には回答をください
和男:失礼
和男:では、千春様、本日は我々の事務所が提携しているシェルターをお使いください。話は通してありますので
千春:そうするわ、ありがと
和男:では、聡様、また明日10時に伺います。ご自宅にいらっしゃらない場合は裁判ということになりますので、宜しくお願いします

 

(自宅を出る)
 

聡:出ていったか……なんだか広く感じるな、どうしてこんなことになっちまったんだろ…………
 

(場面:自宅から1km離れた公園)

 


千春:かんぱーい!
和男:かんぱーい!
千春:うまくいったね、和男くん
和男:ちーちゃんの演技も良かったよ
千春:これで一緒になれるね
和男:まだ手続きが残ってるけどね、しばらくは密会になっちゃうかな
千春:その方がなんだかロマンチックじゃない
和男:あ、美紀ちゃんにも電話しておこう。記録が残ったらまずいから公衆電話で……
和男:あー美紀ちゃん、うまくいきそうだよ、あぁ、うん、わかってるよ、慰謝料は折半、最後まで気を抜かずにお互い行きましょ


 

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